退職届を受け取ってもらえなくても、退職の意思表示をした証拠を残して、会社に届く方法で提出すれば対処できます。無期雇用の労働者は、原則として退職を申し出てから2週間が経過すると退職できると定められています。ただし、契約期間が決まっている場合や、就業規則・雇用契約の内容によって扱いが変わることがあります。
まずは、直属の上司だけでなく、人事部や会社の代表者にも退職届を提出した記録を残しましょう。受け取りを拒否された場合は、内容証明郵便と配達証明を利用する方法が有効です。
退職届を受け取られないときの対処法
1. 退職届を手渡しして、提出した記録を残す
退職届を提出する際は、提出日と退職日を記載した書面を2部用意し、1部を会社に渡します。もう1部には、会社側の受領印や受け取った人の署名をもらい、自分で保管します。
会社が受け取りを拒否する場合は、無理に渡そうとせず、次の内容を記録してください。
- 提出した日時と場所
- 提出した相手の氏名と役職
- 受け取りを拒否されたときの発言
- その場にいた人の氏名
- 退職届の内容と退職希望日
メールや社内チャットで「本日、退職届を提出したが受け取ってもらえなかった」と送信しておくと、提出を試みた事実を残せます。ただし、会社が電子的な提出を正式な手続きとして認めるとは限らないため、書面の郵送も検討してください。
2. 内容証明郵便と配達証明で郵送する
手渡しを拒否された場合は、退職届を内容証明郵便と配達証明付きで会社に郵送する方法があります。
内容証明郵便は、いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明する制度です。配達証明を付けると、会社に配達された事実も確認できます。ただし、内容証明だけで退職が認められるわけではないため、退職届の控えや郵便の記録も保管してください。
宛先は、会社の所在地にある本店や事業所とし、宛名は代表取締役など会社を代表する者にします。人事部が退職手続きを担当している場合でも、会社の代表者宛てに送ることで、提出先を明確にできます。
3. 会社に届いた日と退職日を確認する
退職の意思表示は、退職届を会社に郵送した日ではなく、原則として会社に到達した日が重要になります。郵送する場合は、配達証明で配達日を確認しましょう。
無期雇用の場合の一般的な退職日は、会社に退職の意思表示が到達してから2週間後です。退職日をそれより後に設定している場合は、記載した退職日まで勤務する意思を示したものと扱われる可能性があります。
ただし、民法には一定の期間ごとに賃金が定められている場合などの特則があります。月給制などのケースでは、雇用契約や賃金の定めによって退職時期の計算が変わることがあるため、複雑な場合は個別に確認が必要です。退職の期間に関する基本的な規定は、民法第627条で確認できます。
「退職願」と「退職届」は扱いが違う
退職願は、会社に退職を申し出て承認を求める書類です。一方、一般に退職届は、退職する意思を会社に通知する書類として使われます。
すでに退職を決めており、会社の承認を前提にしない場合は、「退職を願い出る」ではなく、「〇月〇日をもって退職します」と明確に記載します。ただし、会社から退職届の書式や提出方法が指定されている場合は、その内容も確認してください。
なお、退職届を提出した後に会社と合意して退職日を変更した場合などは、別の扱いになることがあります。退職日を変更する場合は、口頭だけでなくメールや書面で合意内容を残しましょう。
退職届に記載する内容
退職届には、少なくとも次の内容を記載します。退職理由は、通常は「一身上の都合」とするだけで足ります。
- 退職届を作成した日
- 会社名
- 代表者の役職と氏名
- 退職する日
- 「一身上の都合により退職する」旨
- 自分の所属、氏名、押印欄
退職日について会社と合意できていない場合は、法定の期間や雇用契約の内容を確認してから記載してください。退職日を一方的に決めると、会社との間で争いになる可能性があります。
会社が「退職を認めない」と言っている場合
会社が退職届を受け取らないことと、退職できないことは同じではありません。無期雇用で、法律上の期間を守って退職の意思表示をした場合は、会社が受け取りを拒否しただけで、退職の意思表示が消えるわけではありません。
ただし、次のケースでは、退職の時期や手続きが異なる可能性があります。
- 雇用期間が決まっている有期契約である
- 契約更新の直後など、契約期間の途中で退職する
- 就業規則や雇用契約に特別な手続きが定められている
- 退職日について会社とすでに別の合意をしている
- 役員や業務委託など、通常の労働者とは異なる契約である
有期契約では、契約期間の途中に退職できる条件が無期雇用と異なります。契約書に記載された契約期間、更新の有無、退職に関する条項を確認してください。
退職届を提出した後に保管するもの
退職後のトラブルを防ぐため、退職に関するやり取りは削除せず保存します。特に次の資料は、退職日や提出日を確認する重要な記録になります。
- 退職届のコピー
- 内容証明郵便の謄本
- 配達証明の記録
- 会社へのメールや社内チャット
- 会社から届いた返信
- 就業規則と雇用契約書
- 退職日までの勤務記録
退職日まで勤務する必要がある場合は、無断欠勤にならないよう、出勤の指示や有給休暇の申請も記録に残してください。会社が離職票や給与、退職に必要な書類を交付しないなど、退職届以外の問題がある場合は、労働局の総合労働相談コーナーや労働問題を扱う専門家への相談を検討します。
退職届を受け取ってもらえないときの手順
- 退職日と雇用契約の種類を確認する。
- 退職届を2部作成し、上司、人事部、会社の代表者など適切な提出先に手渡す。
- 受け取りを拒否された日時、相手、やり取りを記録する。
- 退職届の控えを保管し、内容証明郵便と配達証明で会社に郵送する。
- 郵便の配達日と退職日を確認し、会社とのやり取りを保存する。
- 有期契約や退職日の計算に問題がある場合は、専門窓口へ相談する。
最初に行うことは、退職届の控えを作り、会社に提出した事実を記録することです。手渡しを拒否された場合でも、内容証明郵便と配達証明で会社への到達を確認できる形にしておけば、退職の意思表示をした時期を説明しやすくなります。ただし、有期契約や役員などの場合は扱いが異なるため、契約内容を確認してから進めてください。







